秘密主義(その3)大切な人とのコミュニケーションにおける秘密主義者の行動と心理
ここは、Fantasy学部 教室
4.誤解してはいけないこと-秘密主義者も、お互いにわかり合うことを望んでいる
6.秘密主義者とのコミュニケーションで見られがちな特有の行動とその心理
既述の項目5.において、秘密主義者の本質である「非難回避」と、その実現のために備える「不信」、「干渉拒絶」、「責任転嫁」、「無傷保証」という4種類のセンサーについて説明しました。
このような本質は、必然的に秘密主義者のコミュニケーションにて顕著に表れます。
そこで、秘密主義者とのプライベートなコミュニケーションにおいて見られがちな特有の行動とその心理(内心)について、その代表的なものを以下に列挙してみました。
(1)相手の話を聞かない
この行動の裏の心理は、話を聞かなかったことによって、自分の責任を問われることが無い(つまり、非難回避する必要がない)からです。
慣れた相手であれば、話を聞かないことは、秘密主義者にとってごく普通のことになります。話をスルーしても、叱られることは無く、笑って済ませてくれるからです。
しかし、秘密主義者は、慣れていない相手でも、その相手がプライベートな関係である場合には、悪気なく話をスルーしてしまうことがよくあります。これは、プライベートの会話では、相手から「○○をしなさい」というオーダーを表す発言がほとんど無いからです。
オーダーを表す発言は、ビジネスシーンでは頻繁に用いられます。オーダーを表す発言は、その内容を理解しなければ、回答や対応をすることができないものであり、回答や対応をしなかった場合には、自分の責任を問われてしまいます。
よって、秘密主義者は、オーダーを表す発言については必要以上にしっかりと聞き、その反面、そうでない発言についてはスルーしがちになるのです。
(2)自分の友達に会わせたがらない
この行動の裏の心理は、自分の友達に打ち明けた自己のプライバシーな情報が、その友達から会わせる人に伝わってしまう可能性があり、逆に会わせる人から友達に伝わってしまう可能性もある(つまり、非難回避する必要がある)からです。
なお、「会ってどちらかが不快になったら、自分の責任を問われる」という理由も考えられますが、秘密主義者の場合、そこまでの他人に対する行き過ぎた配慮や心配については、あまりしないのでは…と考えます。
(3)自分のことを話すように仕向けられると、答えずに相手に逆質問する
この行動の裏の心理は、自分のことを話すと、その話した内容に対して相手から否定的な発言や責められるような発言がなされて不安になってしまう可能性があるので、それを回避する(つまり、非難回避する必要がある)ためです。
(4)自分のことを話した際に、それに突っ込むと、話を止めてしまう
この行動の裏の心理は、上記(3)と同様です。
(5)相談しても答えが曖昧で、相談者に「雑に答えてる」と受け止められる
この行動の裏の心理は、相談内容についてはっきりした自分の意見を伝えると、その意見の内容に対して相手から自分の責任を問われることがあり得るので、それを回避する(つまり、非難回避する必要がある)ためです。
(6)逆に、自分が相談するときには、相手の回答内容に責任を要求する
この行動の裏の心理は、・・・秘密主義者が相手に相談するときは、相談内容について、「相手から責められるかもしれないという不安」よりも、「的確な答えがわからないことに対する不安」の方が上回っている時です。よって、「非難を受けるリスクを覚悟して相談しているのだから、そのリスクを上回るリターン(=的確な助言)を得たい」と思っているのです。
7.「これから仲良くなろうとする場面」での秘密主義者とのコミュニケーションにおいて、生じがちなミスマッチポイント
項目1.において既述したように、秘密主義者と開示主義者とでは、対人コミュニケーションにおける原則と例外が逆転しており、コミュニケーションスタイルも全く異なります。よって、秘密主義者が、開示主義者と仲良くなろうとする段階で、コミュニケーションについてミスマッチを感じることは、容易に予測できることでしょう。
しかし、実際の場面では、秘密主義者は、同じ秘密主義者同士で仲良くなろうとする段階においても、コミュニケーションについてミスマッチを感じることが多いことから、「周りにいるのは表面的な関係の人ばかりで、お互いに心で理解し合う関係を誰とも作ることができない」という悩みを抱きがちです。
そこで、「実際に秘密主義者が他人と仲良くなろうとする場面において、どのようなコミュニケーションミスマッチが起きるのか?」ということについて、そのポイントを説明していきたいと思います。
(1)秘密主義者同士でのコミュニケーションの場合
■話題に乏しい
秘密主義者同士でのコミュニケーションにおけるミスマッチとしては、まずは、「話題に乏しく、お互いの理解がなかなか深まっていかない」ということがあります。
即ち、秘密主義者同士では、お互いに“自分のこと”をなるべく知らせないようにするので、コミュニケーションでの話題が、どうしても「気候、時事、趣味等に関する社会的な事実」、「第三者に対する評価」、「差し障りの無い“自分のこと”」になってしまいます。
これらの話題は、相手から伝えられた場合に強く否定する必要性に乏しく、また、自分が伝えて相手から否定された場合の辛さも小さい事柄であることから、肯定したりされたりしたことによって抱く嬉しさや安心感も当然に小さくなります。よって、秘密主義者同士の間で、これらの事柄をいくら大量に承認し合ったとしても、心の距離が少々近づくに過ぎず、「お互いに理解し合う関係」に発展したとまでは思えません。
相手から肯定された嬉しさを感じるためには、自分の個性のうちの、人によって良くも悪くも評価され得る個性(以下、「きわどい個性」と言います)について相手から肯定されることが必要になるのです。
■相手のきわどい個性を、簡単に知り合うことができず、知ったとしても肯定し合いにくい
秘密主義者同士でのコミュニケーションにおける他のミスマッチとしては、「お互いのきわどい個性を、簡単に知り合うことができず、知ったとしても肯定し合いにくいために、お互いの理解がなかなか深まっていかない」ということがあります。
既述したように、秘密主義者同士の場合には、お互いがお互いのことを肯定して安心を得合わなければ、お互いの距離は近づきにくく、お互いの理解がなかなか深まっていかないいものです(既述した項目5.(1)の「非難回避の反射的効果」を参照)。即ち、開示主義者同士のように、お互いの個性を肯定するか否定するかに拘わらず、お互いに知得した個性の総量に応じて理解が深まるわけではないのです。
まず、秘密主義者同士の間のコミュニケーションでは、きわどい個性については、お互いにカミングアウトしようとしないため、きわどい個性についての話題を増やすためには、お互いに共通の行動や体験を重ね、この行動や体験における相手の素の振る舞いから、それぞれが、相手のきわどい個性を感得する必要があります。
しかし、このような行動や体験は、自分と相手以外の第三者も含むグループ単位となりがちであり、この場合には、素の振る舞いが出にくいため、お互いのきわどい個性をなかなか感得することができません。
また、このような行動や体験からお互いにきわどい個性を感得した場合であっても、秘密主義者同士の場合には、それらをお互いに肯定して安心をし合わなければ、お互いの距離は近づきません。即ち、自分が相手のきわどい個性について肯定しても、相手も自分のきわどい個性について肯定しなければ、お互いの距離は近づかないのです。
しかも、相手が自分のどのような個性を感得するかは、相手の感性次第であり、自分では何とも操作することができません。自分が相手のどのような個性を感得するかについても、同様です。即ち、秘密主義者同士の間では、開示主義者が行う自己アピールのように、自分が相手に認知してもらいたい個性を自分で上手くコントロールすることができないのです。このため、一方が知られたくないと思っていた厄介な個性を、他方が感得してしまい否定的な評価をすることも十分にあり得ることから、お互いにきわどい個性を肯定し合う可能性は、どうしても低くなってしまうのです。
(2)秘密主義者と開示主義者とのコミュニケーションの場合
項目1.にて既述したように、秘密主義者と開示主義者とでは、対人コミュニケーションにおける原則と例外が逆転しています。しかし、なぜか、秘密主義者は、図1に示した秘密主義者のレベルが高くなるほど、仲良くなりたい相手として、開示主義者を積極的に選ぼうとするものです。
まずは、本題に行く前に、一般的に、原則と例外が逆転している者同士が向かい合うと、どうなるのか?このことを簡単な例を挙げて説明してみます。
今、「原則として相手の目を見て話すAさん」と「原則として相手の目を見て話さないBさん」が、お互いに好意を持っていて、喫茶店で話をすることになったとします。
Aさんは、目を見て話さないBさんのことを無礼に感じ、「もしかして、私はBさんに嫌われているのかもしれない」のように誤解してしまいますよね。
一方、Bさんは、悪気があって目を見て話さなかったわけではないので、Aさんに対し、それほど悪いことをしているとは思わず、引き続きAさんへの好意を持ち続けます。
このように、原則と例外が逆転している者同士が向かい合うと、誤解が誤解を生み、せっかくお互いに好意を抱いていたにも拘わらず、お互いの距離が近づいていきません。これと同様の現象が、秘密主義者と開示主義者との間でも起こり得るのです。
■秘密主義者は“肯定される質量”、開示主義者は“知得する質量”に期待する
秘密主義者と開示主義者との間のコミュニケーションにおいては、「お互いに心の距離を近づけようと真剣に思えば思うほどに、心の距離が離れてしまい、お互いに理解し合えないと判断して疎遠になってしまう」というケースがよく見られます。
これは、直接的には、秘密主義者と開示主義者との間では、コミュニケーションに期待するものが異なっていることに起因します。
即ち、開示主義者の秘密主義者に対する期待が、「私のきわどい個性を、良いところも悪いところも含めてあなたにいっぱい知らせるから、それと同じくらい、あなたのきわどい個性も教えて欲しい(=私のことが本当に好きなら、私に対しては特別に、多くのきわどい個性も露わにできるだろう)」という“知得する質量”であるのに対し、
秘密主義者の開示主義者に対する期待が、「私のきわどい個性を、私からのカミングアウトに頼らずに、いっぱい見つけて肯定して私を安心させて欲しい(=私のことが本当に好きなら、私の良い個性を見抜けるだろう)」という“肯定される質量”であるからです。
“知得する質量”を期待する開示主義者側では、例えば、次のようなプロセスで、「秘密主義者とは、お互いに理解し合えない」という状況に陥ってしまいがちです。
●開示主義者は、秘密主義者に対し、まずは、自分のことを知ってもらうために自身のきわどい個性をカミングアウトして、秘密主義者からのきわどい個性の同質同量でのカミングアウトを待つものの、秘密主義者からのカミングアウトはほとんどなされない。
↓
●それならと、開示主義者は、秘密主義者のきわどい個性を知るために秘密主義者に直接尋ねるものの、「どうかな?どうだろう?」などとはぐらかして、はっきりと答えてくれない。
↓
●「このまま秘密主義者と時間を重ねても、秘密主義者とはコミュニケーションが成立しない」と、それ以上の接触をあきらめてしまう。
他方、“肯定される質量”を期待する秘密主義者側では、次のようなプロセスで、「開示主義者とは、お互いに理解し合えない」という状況に陥ってしまいがちです。
●秘密主義者は、開示主義者が、まだ仲良くなる前の段階で、自分のきわどい個性が何なのかを尋ねたり、こうじゃないかと質問してくることについて、「今の段階では答えたくないし、・・・だいたい、今、それを知ってどうするの?」と身辺調査を受けているように感じ、開示主義者に対して疑心暗鬼になってしまう。
↓
●こうした質問を上手くかわすべく、「自分はどうなの」と切り返しを入れて開示主義者に突っ込みつつも、答えられる範囲では誠実に自分のきわどい個性を答える。でも、開示主義者は、期待した答えとズレていたせいか、大した反応がなく肯定してくれなかったり、時には全力で否定してきたり・・・「私に安心感を与えて私との距離を縮めていこう」という気持ちがあるとは思えない。
↓
●開示主義者との時間が窮屈で楽しくないと感じ、その時間を持つことに消極的になってしまう。
この例では、開示主義者、秘密主義者のどちらも、素直に仲良くなりたいと思ってコミュニケーションをしているのですが、・・・自分のこと(きわどい個性)に関するギブ&テイクについて、開示主義者側は「ギブに見合ったテイクが無い」と不満になり、秘密主義者側は「テイク(=見返り)を求めるギブなら、受け取りたくない」と不満になり・・・コミュニケーションをするほどにお互いにズレている感が大きくなってしまっていますね。
このように開示主義者と秘密主義者との間でコミュニケーションに期待するものが相違するのは、両者における「大切な人との人間関係」の構築手法が異なることに起因します。
即ち、開示主義者は、「自分に必要な人間関係は、自ら作るもの」という考えに立ち、お互いのことを知って人間関係を作り、知り合った事柄の質や量に応じて、相手をどの序列(恋人、親友→友人→知人→他人同然)の人間関係にしたいのか、相手がどの序列になるのかを見極めます。この結果、思い通りの人間関係が作れず、必要な人間関係ではないと判断した場合には、それまでの序列(恋人、親友、友人)を改訂して“他人同然”に位置づけるのです。
他方、秘密主義者は、「自分に必要な人間関係は、自然に進展するもの」という考えに立ち、「自分が肯定され、必要とされている」と感じる時間が積み重なっていくことで、お互いの関係は、自然に「知人→友人→恋人、親友」というように進展するものと信じています。故に、思い通りに関係が進まないと判断した場合には、それ以上の時間の共有を止めるだけであり、関係はそのまま(=これ以上、進展しないけど、後退もしない)となります。
こうした構築手法の違いは、お互いに「なんとか関係を近づけたい」という思いで焦って言葉を発するほどに、重要な価値観の相違として当事者間でクローズアップされてしまうものです。
よって、項目2.(2)にて既述したように、秘密主義者と開示主義者の間でお互いに理解し合える人間関係を構築していくためには、「態度や行動等の言葉以外の要素でお互いの理解を補完し合っていくこと」が必須のプロセスになるのです。このプロセスの具体的な内容については、説明が非常に長くなりますので、需要がありましたら、別の機会にお知らせしていきたいと思っています。
8.「大切な人との人間関係の終了」に伴って生じる、秘密主義者に特有の行動と心理
誰でも、大切な人との人間関係が終了してしまいそうな時や終了してしまった時には、何かしら心の傷(注:寂しさではありません)が生じるものです。例えば、
●大切な人が私を避けようとするようになった
→なぜ?何か悪いことしたかな?
●大切な人が音信不通になった
→忙しいから?それとも、嫌われてしまったのか?
●大切な人から関係終了(ex.絶縁、離婚等)を告げられた
→私のどこが悪かったのか?元に戻れないのか?
こうした場面に直面した場合、誰もが、表向きには気にしていない振る舞いをしつつ、内心における心の傷を隠そうとします。そして、心の傷を癒そう又は忘れようとして、他の友人と交流したり、趣味や仕事に没頭したり、新たな人間関係を作ったりすることにより、「大切な人がいなくなったとしても、自分は充実しているから、問題ない」ということを自分自身に言い聞かせようとします。
ただ、秘密主義者が心の傷を負った場合には、これだけでは済まず、以下のStep1~4の順に自身の中で思考をめぐらします。Step1~4のような秘密主義者に特有の行動や心理は、理由は、項目5.(1)において既述した秘密主義者の本質である非難回避(=他人から“自分のこと”で責められたり非難されたりするのは嫌だ)に起因します。
【Step1:外向き処理】「自分の責任ではない」と思い込む
秘密主義者は、大切な人との関係の終了の可能性や事実に直面した場合、例えば「私のせい(ex.私の魅力の無さ)で起きたことではない」のように思い込み、関係終了における自身の非や責任を全力で回避しようとします。
しかし、自身の非や責任でないことを納得するためには、「関係終了の責任の所在は、自分以外の○○にある」ということを確定的に認識する必要があります。この○○に入り得るのは、「大切な人」、「第三者」、「不可抗力」のうちのいずれかになります。
【Step2:外向き処理】相手(大切な人)の責任にできない
この際、秘密主義者は、○○に、終了に係る関係の相手である「大切な人」を入れること、即ち、関係終了を「大切な人」の責任にすることができません。
その理由は、次の2つです。
●「大切な人の私に対する気持ちは、私が悪いことをしない限り、変わらない」と強く思い込んでいるから
●「大切な人を選んだのは私なのだから、私にも責任がある」のように、自身の非や責任として受け止めてしまうから(即ち、「大切な人」の責任にしようとすればするほど、自分を責めてしまう結果になるから)
「大切な人を選んだことが自分の責任」・・・この点につき、開示主義者の方は、「理論的にはそうだけど、選んだだけのことで、そこまで自分を責めなくても・・・」と思えるかもしれませんね。
上述の2つの理由は、既述した項目5.(1)の「非難回避の反射的効果」、即ち、「肯定されることによる安心感」に起因します。
即ち、秘密主義者にとっての「大切な人」は、「自分のことを肯定し続けてくれたことによって安心感を抱いた人」です。秘密主義者は、「自分のことを肯定し続けてくれる人なんて、なかなかいるものではない。」ということをよく知っています。このため、秘密主義者は、「大切な人」に対し、「私が厳選した奇特な人であるから、私が悪いことをしない限り、私に対する気持ちは変わらないはずである」という究極の安心感を抱いてしまっています。「人の心は環境の変化に伴って変わる」という人間心理の普遍原理を忘れて。
こうした“究極の安心感”を抱いている相手が自分との人間関係を終了させようとした場合には、普通は、単なる“別れ”に止まらず、“裏切り”と評価し、相手を責める気持ちはMaxになります。
しかし、「この裏切るような相手を“大切な人”として厳選したのは私である」とすれば、「厳選できてないじゃん、私」として、相手を責める気持ちがそのまま自分自身を責める気持ちに変わります。つまり、「大切な人」を責めることは、自分で自分の首を絞めることに帰するのです。
【Step3:外向き処理】「責任は、第三者や不可抗力にある」と思い込むようにする
以上のことより、大切な人からの関係終了に直面している秘密主義者において、「関係終了の責任の所在は、自分以外の○○にある」の○○に入り得るのは、「第三者」、「不可抗力」のいずれかになります。この一例を、秘密主義者が友人に「大切な人からの関係終了に関する悩み」を相談した場合のやり取りとして、以下に示しました。
▽友人:「音信不通なのは相手があなたのことをどうでもいいと思ってるからなのでは?」
▼秘密主義者:「違う。相手は、そんなこと思っていない」
▽友人:「じゃあ、あなたが相手を信じ過ぎたのでは?」
▼秘密主義者:「違う。私は悪くない」
▽友人:「じゃあ、何がいけなっかったの?」
▼秘密主義者:「仕事が忙しいのかも」
▽友人:「なら、普通、そのように連絡するでしょう」
▼秘密主義者:「その連絡もできないほど、忙しいのかもしれない」
▽友人:「そんな…(^^;」
▼秘密主義者:「あと、友達付き合いの良い人だから、それで忙しいのかも」
▽友人:「でも、友達と会っていても、メール1通くらい送れる気がするけど…(^^;」
▼秘密主義者:「礼儀正しい人だから、そういうことはしないと思う」
▽友人:「そんな…(^^;」
【Step4:内向き処理】心の傷を、無意識のうちに、自身で傷つけ続ける
ここまでの外向きの処理において、秘密主義者は、自身のプライドを必死に保とうとして、「大切な人との関係終了の責任は、自分と相手(大切な人)にはなく、第三者や不可抗力にある」というオチをつけました。
しかし、秘密主義者は、『このオチは、「客観的・第三者的に見た時に“自分の責任や恥である”と評価されないように、ポジティブに考えよう」と思い込んで無理矢理に作り出したものに過ぎない』ということを認識しており、その内心は、このオチとは対極にあるネガティブな考えに支配されています。
ここまでのことであれば、開示主義者でも、同様のことはなされ得るのですが・・・
秘密主義者の場合、表面上の態度と内心とのギャップが非常に大きく、表向きには全く気にしていない振る舞いをしているけれども、内心では非常に気にしています。具体的には、この内心におけるネガティブな考えの内容について、次のような特殊性が見られます。
(a)「自分の責任かも→いや、そうではない」という試行錯誤のループを、石炭の火のように静かにくすぶり続けるモードで、長期間、繰り返す。
(b)これを繰り返すほどに、自身の心の傷が深くなり、環境によっては、周りの人が離れて行ってしまい、最後は、自尊心を失って現実逃避してしまうことがある。
つまり、秘密主義者は、大切な人との人間関係の終了によって生じた心の傷を、無意識のうちに自分自身で傷つけ続け、深くしてしまう傾向があるのです。
(a)の試行錯誤のループは、秘密主義者において無意識になされるものです。なぜなら、大切な人との関係終了という不本意な出来事を自分の非や責任だと認めてしまうことは、秘密主義者にとっての自我崩壊を意味します(項目5.(1)で既述した「本質=非難回避」)。よって、この試行錯誤のループを実行することで、自我崩壊しないように自身のマインドをアジャストしているのです。
この試行錯誤のループは、長期間繰り返されてしまうと、秘密主義者の内心構造を“デフォルト=不安定”に変えてしまう非常に危険な自己矛盾のループです。その一例を以下に記載してみました。
■(a)の試行錯誤のループの例
[S1] 大切な人との関係が終了したとしたら
↓
[S2] その原因は、「私の魅力不足(特に内面)」であろう
↓
[S3] このままでは、今後も、同じことを繰り返すかもしれない。
↓
[S4] でも、そのために、自分自身(相手の選び方を含む)を変えることはしたくない
↓
[S5] 自分の相手の選び方が間違っていたと思いたくない。だから、相手が自分ほどに気持ちが無かったとは思いたくない。
↓
[S6] なので、関係が終了することを考える(認める)のは止めよう。
↓
[S7] でも、・・・→[S1]に戻る
[S8] 大切な人から終了宣言がなされた
↓
< [S2]~[S6]と同じ処理 >
↓
[S9] 関係を終了したという事実を認めたくないから、都合の良い友人、知人、セフレ・・・なんでもいいから、関係を継続させよう。
↓
[S10] でも、思い通りの関係になれない現実は、不満であり、悔しく、情けない
↓
< [S2]~[S6]と同じ処理 >
↓
[S10]に戻る
上例において、何度も繰り返される[S2]~[S6]の処理が、自己矛盾のループとなります。
項目5.において既述したように、たいていの秘密主義者は、自己防衛本能が強いため、なかなか他人を信じることができません。
この反面、一旦信じた相手に対しては、主観的に自分に都合よく過大評価して信じ続けてしまいがちであり、「途中で、客観的かつ冷静になって相手の信用性を見直す」ということが不得手です。
そして、裏切られたという事実が明らかになった場合であっても、・・・例えば、裏切られる前の相手の信用性が100%だった場合には、裏切られることによって、「信用性を0%にする」のではなく、相手の信用性は100%に維持したままで、その信用性の値を確保するための措置(相手の言動に対する真実性の検証、相手の行動の監視、管理等)を講じます。こうした措置は、「一旦信じた相手は、何としても信じ続けたい」という意思の表れです。
なお、項目7.(2)において「大切な人との人間関係の構築手法」として既述したように、秘密主義者は、「人間関係を作る」という発想に乏しいため、「大切な人を失ってしまったら、もう同様の人間関係はつくれない」と悲観的になってしまいがちです。このことも、秘密主義者が一旦信じた相手に固執する理由の1つであると考えられます。
なお、上述の(b)に記載した試行錯誤ループの繰り返しによる効果については、秘密主義者が置かれた環境によってバリエーションが多岐に亘るので、ここでは詳しい説明を省略致します。
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タグ:秘密主義