おつとめ|大人の恋愛用語事典
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【おつとめ】
(おつとめ)
「おつとめ」とは、広義には、夫婦や同棲している恋人等の同居のパートナー関係において、一方が他方に対し、他方のための行動を「本当はやりたくないけど、仕方ないから」という気持ちで行うことをいう。
はじめに
夫婦や同棲恋人の一方が友人等の第三者に「おつとめ、おつとめ!」と口癖のように言いながら他方に対して献身的な行為をすることは、世間一般において日常的に頻繁になされていることである。
上述した広義の定義によれば、このようなパートナー間で日常的になされる行為が「おつとめ」に含まれてしまう結果、世の中の大半のカップルが「おつとめ」をしていることになる。
しかし、そのようなカップルの実情は、「実は、ラブラブであり、“おつとめ”の連呼は単なるおのろけ。」であるものから、「切迫した関係にあり、もはや自我や相手の崩壊寸前。“おつとめ”の連呼は世間体を保つための強がり。」であるものまで、天と地ほどの開きがある。
そこで、この記事では、「おつとめ」の意味合いを「自我や相手の崩壊をもたらす危険のある行為」に限定し、次の通り、狭義に解釈する。
狭義の「おつとめ」の定義と成立要件
狭義の「おつとめ」とは、
夫婦や同棲している恋人等の同居のパートナー関係が、
おつとめされる側である他方がおつとめする側である一方に対して片思いの状態(=状態A)であり、かつ、
パートナー関係の継続に関して、一方は、打算や損得勘定のみによって「やむを得ず継続せざるを得ない」と考えているのに対し、他方は、「喜んで継続したい」と考え、かつ、継続の自信と期待を持っている状態(=状態B)
である場合において、
一方が他方に対し、
人として一般的に感情に基づいてなされる行動を、この感情を内心に抱いていないにもかかわらず(=行動C)、
他方からパートナー関係を解消されることがないように、他方にネガティブに感じ取られない態様で(=行動態様E)
実行することをいう。
上述の4つ(状態A、状態B、行動C、行動態様D)は、自我や相手の崩壊をもたらす危険な行為としての「おつとめ」の成立要件となる。
以下、この記事の読者が、普段の自身の行為が危険な行為としての「おつとめ」に該当するかどうか否かについて、クリアに判断することができるように、以下、これら4つの各成立要件の詳細について説明していく。
なお、「おつとめ」は、男女共になされ得る行為であり、上記の4つの成立要件は男女共通のものである。
以下の説明では、あるパートナー関係において、「おつとめ」という行為をする一方のことを「おつとめする側」、このおつとめする側から「おつとめ」という行為をされる他方のことを「おつとめされる側」と言う。
【第1の要件】片思い状態(状態A)
第1の要件である状態A(片思い状態)とは、具体的には、
一方(おつとめする側)は、他方(おつとめされる側)に対する恋愛感情を喪失してしまっていて「他方と同じ空間にいたくない」とネガティブに思っているのに対し、
他方は、一方に対する恋愛感情を抱き続けており、「一方と同じ空間にいたい」とポジティブに思っている状態
をいう。
つまり、「おつとめ」は、お互いの恋愛感情が乖離しているパートナー間において生じるものなのである。
【第2の要件】打算のみによる関係継続状態(状態B)
第2の要件である状態B(打算のみによる関係継続状態)とは、具体的には、
一方(おつとめする側)は、恋愛感情を喪失しているにもかかわらず、他方(おつとめされる側)からの便益の享受や世間体の維持、損失の回避のために、他方とのパートナー関係を継続せざるを得ないと思っているのに対し、
他方は、「一方も、自身と同程度の恋愛感情を抱き続けているだろう」と思い込んでいて、「一方が打算のみによってパートナー関係を継続している」とは夢にも思っておらず、パートナー関係の終了についても全く想定していない状態
をいう。
つまり、「おつとめ」は、お互いの同居継続目的が乖離しているパートナー間において生じるものなのである。
他方(おつとめされる側)からの便益
一方(おつとめする側)が享受の維持を望む「他方(おつとめされる側)からの便益」とは、生活費、家事労務、育児労務等のような、「一方が他方に対する恋愛感情を抱かなくても他方から受け取ることができるもの」に限られる。
よって、一方が「恋愛感情を抱かないとセックスできない」という信条を持っている人である場合には、この人にとっては、他方からの「セックスの提供」は便益として評価されず、むしろ強姦等の人権侵害行為に近しいものとして評価される。
これに対し、一方が「恋愛感情を抱かなくても、夫婦や同棲の義務として、セックスできる」という信条を持っている人である場合には、この人にとっては、他方からの「セックスの提供」は便益として評価される。
世間体
一方(おつとめする側)が維持を望む「世間体」としては、例えば、「友人等の第三者から円満なパートナー関係であると思われたい」、「離別や離婚という出来事を親族や近所の人に知られたくない」等を考えることができる。
損失
一方(おつとめする側)が回避を望む「損失」としては、例えば、「恋愛感情が無い、愛されていない」ということを他方が知って逆上することによる他方からの暴力や暴言等による危害、慰謝料の請求等を考えることができる。
【第3の要件】感情に基づいてなされる行動を、この感情を内心に抱いていないにもかかわらず、実行すること(=行動C)
第3の要件は、一方(おつとめする側)が他方(おつとめされる側)に対して実行する行動の内容に関するものである。
この第3の要件は、一般的に「おつとめ」に該当するかどうかの分かれ目となりがちなものである。「おつとめ、おつとめ!」と言いながら相手に尽くしている方の多くは、この第3の要件を備えていない(つまり、自我や相手の崩壊をもたらすような危険な行為ではない)場合がほとんどであろう。
また、この第3の要件は、「おつとめ」の4つ要件のうちで最も重要なものである。なぜなら、「人として一般に、感情に基づいてなされる行動」を、その感情を内心に抱いていないのに実行してしまう-こうした「自分自身の感情(内心)を誤魔化して歪めた行動」の継続が、後に自我や相手の崩壊をもたらす根源となるからである。
「人として一般に、感情に基づいてなされる行動」としては、例えば、「嬉しい」という感情に基づいて喜ぶこと、「楽しい」という感情に基づいて笑うこと、「好き」という恋愛感情に基づいて身体的接触(キスやセックスを含む)をすること等を考えることができる。
そして、これらの行動を、「この感情を内心に抱いていないにもかかわらず、実行する」とは、例えば、「嬉しい」という感情を抱いていないのに喜ぶこと、「楽しい」という感情を抱いていないのに笑うこと、「好き」という恋愛感情を抱いていないのに身体的接触(キスやセックスを含む)をすること等を考えることができる。
従って、感情に基づかずに共同生活のための義務や役割分担に従ってなされるような行動(例えば、仕事をする、生活費を渡す、家事や子育てをする、ゴミ当番や町内会に出席する等)は、いくらドライに割り切ったビジネスライクな内心で行ったとしても、本記事の狭義の「おつとめ」には該当しない。よって、このような行動をいくら長期間継続しても自我や相手の崩壊にまでは至らない。
つまり、「おつとめ」と言うためには、単なる内心と行動の不一致(=思っていることとやっていることが違う)のみでは足りず、感情と行動の矛盾(=その感情を抱いているのなら普通はできない行動を、実行している)が要求されるのである。
【第4の要件】他方からパートナー関係を解消されることがないように、他方にネガティブに感じ取られない態様で(=行動態様D)
第4の要件は、第3の要件である「自分自身の感情(内心)を誤魔化して歪めた行動」について、一方(おつとめする側)が、この行動を実行しようとした動機と、この行動を実行した結果、他方(おつとめされる側)から得たい評価とを定めたものである。
「他方からパートナー関係を解消されることがないように、」という動機が生じるのは、第2の要件としての状態Bにて既述したように、一方は、打算により「他方とのパートナー関係をやむを得ず継続せざるを得ない」と考えているため、他方が別れる気持ちになってしまったら困るからである。
また、「他方からネガティブに感じ取られないように」という他方の好評価の獲得を望むのは、一方が、恋愛感情が無いことや打算のみで関係を継続していることを、他方に覚られないようにし、他方がパートナー関係の継続について疑義を抱かないようにするためである。
よって、一方が他方に対し、「他方からどう思われても構わない」と思って自身の感情(内心)を誤魔化して歪めた行動している場合には、この第4の要件を備えていないので、「おつとめ」には該当しない。よって、このような行動をいくら長期間継続しても自我や相手の崩壊にまでは至らない。
つまり、「おつとめ」と言うためには、感情と矛盾した行動をしているのみでは足りず、その行動によって相手を欺く(=相手から“悪い人”と思われたくないから、相手に対するネガティブな感情を秘めて、相手に媚を売る)意図が要求されるのである。
「おつとめ」と言えるには、パートナー関係において4つの要件全ての具備が必要
パートナー関係において上述した4つの要件の1つでも欠けている場合には、自我や相手の崩壊をもたらす危険のある行為としての「おつとめ」には該当しない。
一般に、友人等の第三者に対して「おつとめ、おつとめ!」と連呼するような人は、上述した4つの要件のいずれかが欠けているものである。よって、このような人においては、パートナー不和の深刻度は軽く、「おつとめ、おつとめ!」との連呼は単なるおのろけの戯言に過ぎない場合も多い。
なぜなら、友人等の第三者に対して「おつとめ、おつとめ!」のように口に出して自虐できるのは、「そうではない。そうありたくない。」という思い込みや期待がまだ残っていることの証であるからである。
「4つの要件の1つでも欠けている場合」とは、具体的には、次のような発展的なパートナー関係や退廃的なパートナー関係に該当する場合である。
◆発展的なパートナー関係
パートナーの双方ともに、恋愛感情がある場合 or パートナー関係を喜んで継続したいと思っている場合 or 感情に素直な行動をしている場合 or 打算でない純粋な気持ちで「パートナー関係を解消したくない」と思っている場合 or 相手から悪い人と思われても構わないと思っている場合
◆退廃的なパートナー関係
パートナーの双方ともに、恋愛感情がない場合 or パートナー関係を打算によって継続せざるを得ないと思っている場合 or 感情と矛盾する行動をしている場合 or パートナー関係を解消しても構わないと思っている場合 or 相手から悪い人と思われても構わないと思っている場合
<理由>
パートナーの双方ともに、恋愛感情、同居継続目的、内心と行動との関係性、打算によって相手を欺く気持ちの有無のいずれかが同じである場合には、それが同じであることに依拠して「お互いに相性が悪くない」のようにポジティブに評価し合えるものである。以下、このことを「パートナー相互の同類評価」という。
こうしたパートナー相互の同類評価は、相手に対する背信性を和らげるのみならず、「相手も自分と同じ気持ちである」という安堵感が得られ、むしろ、それぞれにとってパートナー関係を維持する積極的な理由ともなり得る。
よって、この同類評価が少しでも維持されている限り、パートナー関係を継続して相手に様々な行為をしたとしても、自我や相手の崩壊までには至りにくい。
熟年夫婦などでは、「夫も妻も、共に、相手に対する恋愛感情が無く、同居継続もしたくないと思っているが、生活等のため仕方なくパートナー関係を継続している」という場合がよくある。この場合は、夫と妻の双方が、上述の退廃的なパートナー関係として列記した全ての要素を等しく備えていることから、お互いの同類評価も高くなる。
このようにパートナー間におけるお互いの同類評価が高いほど、そのパートナー関係が発展的か退廃的かにかかわらず、将来に離別や離婚が生じる確率は低くなり、「長年の間、安定継続するカップル」となり得るのである。
なお、お互いの同類評価が高い退廃的なパートナー関係においては、「その後、どちらかが他の異性に巡り合い、恋愛に目覚めた結果、離別や離婚が生じた」という場合であっても、お互いに「想定内のイベントである」と解釈することできる。よって、パートナー関係の継続によって自我や相手の崩壊をもたらすほどの危険はまず無い。
「おつとめ」の継続によるリスク
これに対し、上述した4つの要件のすべてを備えているパートナー関係においては、おつとめする側に、「おつとめ」を継続するほど、自我や相手の崩壊をもたらす危険が高まる。
一般的な傾向として、おつとめする側は、この危険が高くなるにつれて、友人等の第三者に対して「おつとめ、おつとめ!」との連呼をしないようになり、この危険度がマックスになると、第三者に対して円満アピールを演じるようになる。
なぜなら、人は、物事が絶望的になるほど、第三者に対し、その絶望的な本心を隠そうとし、ひいては「覚られまい」と思うものだからである。
「おつとめ」を継続するほど、おつとめする側に自我や相手の崩壊の危険が高まるメカニズムについて、以下の表1を参照しつつ説明する。表1は、上述した「おつとめ」の要件をコンパクトにまとめたものである。
「おつとめする側」のリスク
この表1において、もしあなたが「おつとめする側」だったとしたら・・・
表1の「おつとめする側」の判断基準と判断結果は、「夜のお店の店員が、お客に対し、頻繁に店に来てお金をたくさん遣って欲しい時に、抱く内心や取る行動(=感情と行動が分離)」と酷似している。
よって、このような感情と行動が分離した生活が毎日3年も続いたら、・・・
「パートナー関係では、夜のお店の店員がお客にするような対応が、楽だし、得意だし、それで十分!」という人でない限り、パートナー関係において自分が自分らしく生きられていないことについて自分自身を責め続けてしまい、最後には自我が崩壊してしまう。
「おつとめされる側」のリスク
また、この表1において、もしあなたが「おつとめされる側」だったとしたら・・・
表1の「おつとめされる側」の判断基準と判断結果は、「夜のお店のお客が、店員に対し、恋心を抱き、かつ、店員の思わせぶりな振る舞いから店員も自分に対して恋心を抱いていると思い込んでしまった時に、抱く内心や取る行動(=相手の心の純粋さを信じて相手のための行動をする)」と酷似している。
よって、このような相手の心を信じて相手のための行動をする生活が毎日3年も続いた後に、相手の本音が表1の「おつとめする側」の判断結果であることがわかったら、・・・
「パートナー関係では、夜のお店のお客のように扱われるのが、楽だし、気分がいいし、それで十分!」という人でない限り、「馬鹿にされた、裏切られた、プライドを傷つけられた」という気持ちでいっぱいになるだけでなく、そのような結果を全く想定していなかったために結果を受け入れられず自暴自棄になり、最後には、おつとめ対応をして騙し続けてきた相手を傷つけ崩壊させようとしてしまう。
「おつとめする側」の対策
このようなリスクを避けるためには、上述した4つの要件のうちの1つでも具備しないパートナー関係に変わる必要がある。
ところで、このようなパートナー関係に変わることを、おつとめする側としては、「できれば、自身の手を汚さずに、実現したい」と思うものである。
例えば、相手(おつとめされる側)が、近い将来、自分(おつとめする側)への恋愛感情を自然に失ってくれたとしたら・・・パートナー関係は上述した第1の要件(片思い状態)を具備しないものに変わり、「おつとめ」のリスクを回避できるようになるので、おつとめする側にとっては好都合であろう。
しかし、おつとめされる側に、このような自然な退化を期待することは難しい。なぜなら、表1にて既述したように、おつとめされる側は、おつとめする側から「おつとめ」をされ続けることにより、おつとめする側に対し、日々、好評価を積み重ねているからである。
この他、おつとめする側が自身の手を汚さない方法としては、「おつとめする側がおつとめされる側に対する恋愛感情を復活させ、上述した第1の要件(片思い状態)を具備しないパートナー関係に変える」という方法がある。
しかし、おつとめする側が一度失った恋愛感情をすぐに復活させることは、現実には難しい。
よって、上述した「おつとめ」のリスクを避けるためには、現実的な方法としては、おつとめする側が、次のいずれかを一日も早く実行することにより、相手に対する「おつとめ」をやめることが望ましい。やめた後に相手(おつとめされる側)から不満が出ることを覚悟した上で。
●恋愛感情が無いことを相手にわからせる。
●打算のみでパートナー関係を続けていることを相手にわからせる。
●感情を偽った行動(楽しくないのに笑う、好きでもないのにキスやセックスをする)を止める。
●「相手から別れられても、悪い人と思われてもかまわない」と開き直り、相手に媚を売るのを止める。
このようにされた相手(おつとめされる側)は、その時は、混乱し狼狽するかもしれない。
しかし、それ以降、そのパートナー関係において、自我や相手の崩壊への道は確実に断たれるであろう。
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